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::11.22
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マフィアまんが読んでたらマフィアの話が書きたくなったので
オリジナルでしかも即興の酷い話
ちかなりにすればよかったかもしれない
昔マフィアで書いてた時にチラリと考えていたネタですが、誰と誰にするかが全く思いつかなくてやめたのでした
続きにあります
その男はとても奇妙な部屋に住んでいる。
1LDKの小綺麗なアパルトメントで、階段しかない3階建ての建物だ。
玄関の脇には同じような黒の革靴だけが収まった下駄箱があり、左右にトイレとバスルームがある。
その奥の扉の向こうが対面のカウンターキッチンを設えたLDKで、カウンターの上には小さなサボテンが置いてある。
アイボリーの布張りのソファと、同じ色のコーヒーテーブル、小さなチェストと、これまた同じような黒のスーツばかりが入ったワードローブがあるだけの部屋はひどく閑散とした印象を与えた。
これだけならばよくある男の一人暮らしの部屋だと言えたかもしれないが、本当に奇妙なのは男が寝室にしている部屋である。
その部屋の左側にある白い扉の向こうがその部屋で、シングルのパイプベッドと、両手を広げたくらいの幅の背の低いチェストがぽつりと置かれている。
奇妙なのはその部屋の壁だ。
一面に人の写真が貼られている。
若い女、年老いた男、あどけない子供や肩を組む友人らしき2人組、幸せそうに笑う家族。
しかし、その写真の殆どが人物の眉間にピンが刺さっている。
君の悪い部屋だが、そこに住んでいる男はそれをおかしいと思ったことも、気味が悪いと思ったこともない。
その男はルッジェーロと呼ばれているが、それが本名であるのかどうかは誰も知らないし、知ろうとも思わない。
彼を呼ぶ記号があればそれで事足りるのだ。
今日も彼はこの部屋で食事をして眠る。
短い黒髪を垂直に落ちる雨に濡らしながらルッジェーロは玄関を開けた。
暗いままの室内の灯りをつけ、雨に濡れたスーツのジャケットをソファに脱ぎ捨てる。
ワイシャツの上から体を縛るホルスターを外すでもなく奇妙な寝室へ入り、チェストの上に置かれたピンの一つを写真の中で微笑むブロンドの女の眉間に刺した。
そうして取り上げた二つ目を隣に映る男の眉間に刺し、ホルスターからシルバーのベレッタをチェストの上に放り出してベッドに倒れこんだ。
何を思うでもない。
ただ、一日を終えたのだと思った。
ルッジェーロは無神論者なので、神に感謝をするようなことはしない。
今日も死ななかった、となんの感慨もなく事実を受け止めるだけだ。
しばらくシーツに体を沈めたあと、幽霊のようにゆらりと持ち上げた腕にまとわりつくワイシャツの匂いを嗅ぐ。
こびりついた硝煙の匂いがする。
深く息を吸い、枕の下にP230があることを確かめて目を閉じた。
今日は良く眠れそうだ。
ルッジェーロは小さな足音に目を開けた。
こつりこつりと近づく革靴の足音だ。
シワだらけのシーツに包まりながらここの住人ではないなと判断する。
隣の住人は足の悪い老人だし、反対側は道路である。
規則正しい足音は、その持ち主に2本の健康な足があることをルッジェーロに教えた。
足音が途切れ、鍵を掛けない扉が開かれる気配があった。
ルッジェーロは自分を殺しに来た男かと思う。
枕の下でP230を掴み、足音の主が寝室の扉を開けるのと同時にベッドのうえに俯せたままセーフティを外して銃口を向けた。
「相変わらず悪趣味な部屋で寝ているんだな、ルッジェーロ。」
灯されたままのリビングの光をブロンドの髪にキラキラと反射させながら明け方の招かれざる客は言った。
「俺の勝手だ。何の用だ。」
構えていた銃をP230を床に放り投げて仕事だと言葉を続ける男に背を向けてシーツに潜り込む。
「俺はまだ眠たいんだ。」
「話を聞けよルッジェーロ。仕事だ。」
シーツを頭から被るルッジェーロにブロンドの男は一歩近づいた。
「俺にはお前に従うだけの理由がない。仕事の話ならターゲットの資料と小切手だけ置いて帰れ。金額に納得が行けば3日で跡形もなく消しておいてやる。」
一息に言うルッジェーロへの距離を詰める男に舌打ちし、きつくシーツを引き寄せる。
ルッジェーロはラファエロの描く天使のようなブロンドと、とろけそうに甘いマスクを持つこの男が大嫌いだ。
なぜなら、彼はクリスチャンだからだ。
「ルッジェーロ、今回の仕事は死ぬかもしれないぞ。」
「持って来たのはお前だ。俺が死んだらお前のせいだな。せいぜい神様にでも赦しを請え。」
「神が許しても、俺は死んだお前を許さない。」
「死んだ俺には関係ないな。早く帰れよ、ガスパロ。どうせ下で部下が待っているんだろ?」
ルッジェーロはその後ガスパロが何を言っても返事をしなかった。
死ぬ前に懺悔でもしておけよ、天国へ行くためだ。
そう言い残してガスパロは部屋を出て行った。
規則正しい足音を響かせてガスパロは部屋を離れる。
その足音が消え、ドイツ車と思しきエンジン音が遠ざかって始めてルッジェーロはベッドの上にだらりと座った。
短い黒髪をぐしゃぐしゃと掻き回し、靴を履いてベッドを降りる。
床に落としたP230を再び枕の下に押し込み、ガスパロが閉めなかった扉を抜けてリビングへ向かう。
カウンターの上、サボテンの横に放り出された茶色の封筒を取り上げた。
帰った時にはなかったそれは、ガスパロが置いて行ったものだと言うことはすぐに理解できた。
その中身を取り出し、封筒をコーヒーテーブルに投げ出す。
クリップを外して床に捨てる。
ターゲットはコロンビアの麻薬カルテルのボスだ。
アルベルトと言う名の男。
これは死ぬかもしれないな。
そう考えて心臓がざわついた。
噂は聞いている。
シチリアマフィアと手を組んで粗悪な麻薬を安価で南部に流しているらしい。
となるとローマに本拠を構えるガスパロを頂点とするファミリーが流す高価だが質のいい麻薬は淘汰されるのが当然だ。
ジャンキーはキマればなんだっていい。
安いに越したことはないと言う訳だ。
シチリアのマフィアのボスに会いにくるアルベルトを、ボスに会う前に消すのが仕事らしい。
日付は一週間後だ。
懺悔に行くだけの時間はあるだろうが、ルッジェーロは無宗教の無神論者である。
「懺悔するくらいなら殺さねえよ。」
どこまでも意見の合わないガスパロに吐き捨てるように言い、資料もコーヒーテーブルに投げる。
窓を叩きつけるように降る雨が、窓に映りこんだルッジェーロの姿を滲ませる。
どろりと溶けていくようなその姿を某然と眺め、本当に溶けてしまえばいいと思う。
この体にこびりついて消えない硝煙の匂いだけをあの男に残して。
ああ、どうしてあの男は神なんて信じているんだろう。
(フリーの殺し屋と巨大マフィアのボス)
1LDKの小綺麗なアパルトメントで、階段しかない3階建ての建物だ。
玄関の脇には同じような黒の革靴だけが収まった下駄箱があり、左右にトイレとバスルームがある。
その奥の扉の向こうが対面のカウンターキッチンを設えたLDKで、カウンターの上には小さなサボテンが置いてある。
アイボリーの布張りのソファと、同じ色のコーヒーテーブル、小さなチェストと、これまた同じような黒のスーツばかりが入ったワードローブがあるだけの部屋はひどく閑散とした印象を与えた。
これだけならばよくある男の一人暮らしの部屋だと言えたかもしれないが、本当に奇妙なのは男が寝室にしている部屋である。
その部屋の左側にある白い扉の向こうがその部屋で、シングルのパイプベッドと、両手を広げたくらいの幅の背の低いチェストがぽつりと置かれている。
奇妙なのはその部屋の壁だ。
一面に人の写真が貼られている。
若い女、年老いた男、あどけない子供や肩を組む友人らしき2人組、幸せそうに笑う家族。
しかし、その写真の殆どが人物の眉間にピンが刺さっている。
君の悪い部屋だが、そこに住んでいる男はそれをおかしいと思ったことも、気味が悪いと思ったこともない。
その男はルッジェーロと呼ばれているが、それが本名であるのかどうかは誰も知らないし、知ろうとも思わない。
彼を呼ぶ記号があればそれで事足りるのだ。
今日も彼はこの部屋で食事をして眠る。
短い黒髪を垂直に落ちる雨に濡らしながらルッジェーロは玄関を開けた。
暗いままの室内の灯りをつけ、雨に濡れたスーツのジャケットをソファに脱ぎ捨てる。
ワイシャツの上から体を縛るホルスターを外すでもなく奇妙な寝室へ入り、チェストの上に置かれたピンの一つを写真の中で微笑むブロンドの女の眉間に刺した。
そうして取り上げた二つ目を隣に映る男の眉間に刺し、ホルスターからシルバーのベレッタをチェストの上に放り出してベッドに倒れこんだ。
何を思うでもない。
ただ、一日を終えたのだと思った。
ルッジェーロは無神論者なので、神に感謝をするようなことはしない。
今日も死ななかった、となんの感慨もなく事実を受け止めるだけだ。
しばらくシーツに体を沈めたあと、幽霊のようにゆらりと持ち上げた腕にまとわりつくワイシャツの匂いを嗅ぐ。
こびりついた硝煙の匂いがする。
深く息を吸い、枕の下にP230があることを確かめて目を閉じた。
今日は良く眠れそうだ。
ルッジェーロは小さな足音に目を開けた。
こつりこつりと近づく革靴の足音だ。
シワだらけのシーツに包まりながらここの住人ではないなと判断する。
隣の住人は足の悪い老人だし、反対側は道路である。
規則正しい足音は、その持ち主に2本の健康な足があることをルッジェーロに教えた。
足音が途切れ、鍵を掛けない扉が開かれる気配があった。
ルッジェーロは自分を殺しに来た男かと思う。
枕の下でP230を掴み、足音の主が寝室の扉を開けるのと同時にベッドのうえに俯せたままセーフティを外して銃口を向けた。
「相変わらず悪趣味な部屋で寝ているんだな、ルッジェーロ。」
灯されたままのリビングの光をブロンドの髪にキラキラと反射させながら明け方の招かれざる客は言った。
「俺の勝手だ。何の用だ。」
構えていた銃をP230を床に放り投げて仕事だと言葉を続ける男に背を向けてシーツに潜り込む。
「俺はまだ眠たいんだ。」
「話を聞けよルッジェーロ。仕事だ。」
シーツを頭から被るルッジェーロにブロンドの男は一歩近づいた。
「俺にはお前に従うだけの理由がない。仕事の話ならターゲットの資料と小切手だけ置いて帰れ。金額に納得が行けば3日で跡形もなく消しておいてやる。」
一息に言うルッジェーロへの距離を詰める男に舌打ちし、きつくシーツを引き寄せる。
ルッジェーロはラファエロの描く天使のようなブロンドと、とろけそうに甘いマスクを持つこの男が大嫌いだ。
なぜなら、彼はクリスチャンだからだ。
「ルッジェーロ、今回の仕事は死ぬかもしれないぞ。」
「持って来たのはお前だ。俺が死んだらお前のせいだな。せいぜい神様にでも赦しを請え。」
「神が許しても、俺は死んだお前を許さない。」
「死んだ俺には関係ないな。早く帰れよ、ガスパロ。どうせ下で部下が待っているんだろ?」
ルッジェーロはその後ガスパロが何を言っても返事をしなかった。
死ぬ前に懺悔でもしておけよ、天国へ行くためだ。
そう言い残してガスパロは部屋を出て行った。
規則正しい足音を響かせてガスパロは部屋を離れる。
その足音が消え、ドイツ車と思しきエンジン音が遠ざかって始めてルッジェーロはベッドの上にだらりと座った。
短い黒髪をぐしゃぐしゃと掻き回し、靴を履いてベッドを降りる。
床に落としたP230を再び枕の下に押し込み、ガスパロが閉めなかった扉を抜けてリビングへ向かう。
カウンターの上、サボテンの横に放り出された茶色の封筒を取り上げた。
帰った時にはなかったそれは、ガスパロが置いて行ったものだと言うことはすぐに理解できた。
その中身を取り出し、封筒をコーヒーテーブルに投げ出す。
クリップを外して床に捨てる。
ターゲットはコロンビアの麻薬カルテルのボスだ。
アルベルトと言う名の男。
これは死ぬかもしれないな。
そう考えて心臓がざわついた。
噂は聞いている。
シチリアマフィアと手を組んで粗悪な麻薬を安価で南部に流しているらしい。
となるとローマに本拠を構えるガスパロを頂点とするファミリーが流す高価だが質のいい麻薬は淘汰されるのが当然だ。
ジャンキーはキマればなんだっていい。
安いに越したことはないと言う訳だ。
シチリアのマフィアのボスに会いにくるアルベルトを、ボスに会う前に消すのが仕事らしい。
日付は一週間後だ。
懺悔に行くだけの時間はあるだろうが、ルッジェーロは無宗教の無神論者である。
「懺悔するくらいなら殺さねえよ。」
どこまでも意見の合わないガスパロに吐き捨てるように言い、資料もコーヒーテーブルに投げる。
窓を叩きつけるように降る雨が、窓に映りこんだルッジェーロの姿を滲ませる。
どろりと溶けていくようなその姿を某然と眺め、本当に溶けてしまえばいいと思う。
この体にこびりついて消えない硝煙の匂いだけをあの男に残して。
ああ、どうしてあの男は神なんて信じているんだろう。
(フリーの殺し屋と巨大マフィアのボス)
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