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::11.22
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※教師長曾我部×高校生毛利
訳ありで一人暮らししてる毛利の片想い
長曾我部→←毛利でも長曾我部←毛利でも
昔やってた別ジャンルリメイク。
強いて言うならば熱があってしんどくて頭が回らなくてでも余計な事ばかり考えていたから彼をひとりで暮らしているこの部屋に呼んだ。
(でもこんなことになる予定ではなかった。それは断言できる)
ベッドの上に座り込んで、ぼたぼたと涙を零している。
泣くほどの何があったわけではないのだが、眠りが浅くて本当に辛いしんどさだった。
重たい頭でぼんやりと熱のだるさと頭と関節の痛みと空腹に耐えていたら、このまま死んでしまって、誰にも見つけてもらえないまま朽ちていく自分が容易に想像できて。
そう、それはもう本当に容易く想像できてしまったのだ。
その妄想は恐ろしいほどの不安を引きつれて毛利の脳裏に巣食った。
どんどん肥大していく妄想と不安に耐えることも、非現実的だと一笑に付すこともできなかったのは熱に侵されて回らない頭のせいだと思ったが、気付いた時には枕元に放り出した携帯電話を掴んで突発的に彼に電話をかけていた。
真夜中の電話に出た彼はどうした?と、とてもとても優しい声で問うた。
らしくなくそれに安堵したことは覚えている。
ただの担任教師でしかない彼が、こんな真夜中の不躾な自分の電話に出てくれたことが酷く嬉しかった。
ひとりではなかったという実感が頼りない電波に乗って届く声で形成されていく。
喜びと安堵が一気に襲いかかった不安定な精神がぐらりと傾いで、彼に返事をする前に泣き出してしまっていた。
(はっきり言って自分自身がうっとおしいと思ってしまうくらいにそれは)
(我の中でも不測の事態で)
目の前に立っている彼の着ているパーカーが伸びてしまうんじゃないかと危惧するほどに強く強くそれを握りしめて、声にならない泣き声を上げながら、この現状をどうにかしようとしている。
(けれど、感情というものはその器である我のことなんてお構いなしに溢れていくもので)
目の前の彼は困ったように笑って大丈夫かと何度も尋ねるばかりで、泣き続ける毛利がそれに答えることはない。
彼を呼んだこと自体が間違いだったかもしれない。
(けれど、現状、こうなってしまったのは自分が不甲斐無いせいだということにして呼んだことは不問にすることにした)
「毛利、泣くな。」
そう言って一日寝ていたせいで絡まった毛利の細い薄色の髪を梳くようにして撫でる。
(撫でられたからってどうにかなるような現状ではないのだけど、)
(それはきっと彼もわかっている。)
頷くように俯いたら、目の前の彼が俺の手を握った。
(その手は酷く温かい)
「病院、行っとくか?車で来たから乗せてってやるし、帰りも連れて帰ってきてやるから。」
毛利は子供のように首を横に振る。
涙が散らばったせいで、部屋の湿度が上がった気がした。
(どうせ行くのなら内科よりも精神科が先だ)
(落ち着け、我。)
彼はまだ毛利の髪を撫で続けていて、剥がれ落ちない仮面のように困った笑顔をその整った顔に張り付けている。
何もないがらんとした部屋の中で、彼の小さな小さなため息が大きく響いて部屋の中の湿度がまた上がる。
(それが、若干不愉快)
目の前の彼が俯いたままの毛利の顔を覗き込むようにしてしゃがみ込む。
指先が白くなるほどに力を込めて掴んでいたパーカーの裾が伸びることを危惧した毛利の指先がぎこちない仕草で離れる。
(行かないで)
(また掴む、二の腕のあたり)
ふわり、と少し甘酸っぱい香水の匂いが少し遅れて降ってきた。
その匂いに、少しだけ気分が悪くなった。
こんな時間の唐突な呼び出しなのに、香水をつけてくるだけの余裕があったのだ。この男には。
もしかしたら女からの深夜の呼び出しに慣れているのかもしれない。
熱のせいで浮き足立つ思考がまた碌でもないことを考え始めて、涙は一向に止まりそうにない。
「病院行かねえなら薬飲んであったかくして寝てろ、な?」
首を横に振ることで応えた毛利の頬を流れる涙を拭う指先の暖かさに吐き気がする。
その指先で誰に触れるのだろう。
その指先はその誰かに触れる時、もっと優しいのだろうか。
目の前の男に詰問したいと思うのに声が出なくて、イライラする。
(正確には嗚咽しか出なくて、だけれど)
(いやでも、声が出ないことに感謝するべきなのかもしれない)
(そんなことを聞いたとして、自分がそうやって触れてもらえる確率はゼロから動きようがないのだ)
パーカーを掴む両手に力を入れたら、ギリ、と短い爪が繊維に食い込んで、また不快感と吐き気が込み上げる。
喉奥まで迫った吐き気を耐えるように僅か痙攣した背中に、彼の手が回りパジャマ代わりのトレーナーの上からでもわかるほどに背骨の浮いたそこをゆっくりとさすられる。
濃度の上がった彼の香水の匂いに、一息に全てをぶちまけたくなる。
「気持ち悪いなら一回吐いてこい。」
またむずがる子供のようにいやいやと首を横に振る。
まさかこのどろどろとした全てを吐き出してしまうわけにはいかない。
毛利の高すぎるプライドがそれを許すはずもなかったが、何よりいい加減彼もうんざりして帰ってしまうかもしれないと思うと恐ろしくてそんなことは出来なかった。
ただでさえみっともなく泣きながら縋り付いているというのに、これ以上彼に求めて許されるものなどありはしない。
それでも彼のパーカーを掴む冷たい指先を解くことは出来なかった。
俯いた顔を覗きこまれて、また涙がこぼれた。
徐々に部屋の中の湿度が上がっていくのは、この涙のせいか。
(本当に、いろんなことが不愉快なのに、我はその原因を何一つ止めることができない)
(そしてその無力感が怖いくらいにのしかかる)
「とりあえず眠れるまではいてやるから。ちったぁ寝とかねえと治るもんも治らねえぞ。」
らしくもなく謝罪の言葉を紡ごうとした唇は、引き攣った醜い呼吸音しか吐き出さずに毛利はまたイライラと唇を噛み締める。
安い蛍光灯の光を乱反射する銀色の髪が眩しくて視神経が痛む。
その続きのように脳全体が痛んで、こめかみを締め付けられるような圧迫感が酷く不愉快。
泣いたせいで水分を失った喉の粘膜がひゅうひゅうと無様な音を立てるのも、止まらない涙も、思いどおりにならない目の前の現実も、思い出したように呼吸を妨げる鼻のつまりも、中途半端に優しい目の前の男も全てが不愉快だ。
その不愉快の原因の大方8割は自分が目の前の彼のことをこんなにも好きなのが全てだと言うのに、コントロールの利かない感情が時に津波のように、時に穏やかに砂浜を洗う小さな並のようにひっきりなしに押し寄せるからだと言うのに。
全ての責任をどこかに転嫁してお前のせいだと怒鳴り散らかしたいほどの不快感が毛利を苛む。
憂鬱と苛立ちと切なさとそして慕情が倒錯して毛利の薄い胸の裡で渦を巻いている。
(もう一回言う、落ち着け、我)
引き攣った呼吸が気管に入ってごほごほと派手に咳き込んだら、再び近づいた彼の香りと共に暖かくて大きな手のひらが背中を撫でた。
触れられるたびに痛む心臓がそのうち破れて死んでしまうと思った。
それでも、パーカーを掴んだままの手は放せない。
願わくば一生この手にこの男を捕らえておきたいとさえ思っている。
「どうしたんだよ、マジで。」
どうして欲しいんだよ?と顔を覗き込んでくる男の癖のある低い声にさえ欲情しそうな自分を曝け出す程には毛利の理性は崩壊していない。
(どうして欲しいかなんて、聞くな)
(そんなの愛して欲しいに決まっている。一生その手に縛られて生きていたい)
「……───で、」
「ん?」
「行かない、で…」
ああでも聞かれれば答えられるあたり自分の限界って思っていたよりも遠いんだなと、毛利は泣きすぎて酸欠に陥り始めた頭でぼんやり思った。
目の前の彼は、拍子抜けしたように笑って、どこにもいかねえよ、と言った。
(嘘吐き)
(だけど、好き)
毛利の中で何かが弾けるように壊れて、困った涙はまた止まらなくなった。
それを拭う手は感情なんてないはずなのに暖かくて、声を上げて泣いたらすっきりするのかもしれない、と思った毛利はバカみたいに声を上げて泣いた。
目の前の男の良く鍛えられた胸にしがみつき、子供のように声を上げて泣く毛利の背中を撫でる彼は呆れたように溜め息をつき、お前もまだ高校生だもんなと呟いた。
ふわりと抱き締める彼の腕の中で朦朧とする意識の片隅にこの思い出だけを糧に生きていかなくてはならないこの先の長すぎる一生を思って毛利はこのまま死んでしまいたいと願う。
窓の外は雨だ。
End
それでも、好きと言わなかったことを、褒めてよ。
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