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::11.22
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千本桜いい曲!!
寝込んでたらあまりにも暇だったので、佐助にも風邪をひかせてみました。
いつになったらあいつらはくっつくんですか?\(^o^)/
テレビを買い換えたのではやくプレステ買いたいです。宴がやりたいです佐助たんくんかくんか!!
あ、熱はさがりました。コンタックマジ愛してる\(^o^)/
続きで読めます。ホストです。
ベッドの上に横向きに転がっていた佐助の長いまつげが震え、熱っぽい吐息が薄い唇から漏れる。右手をベッドにつき、僅かに浮かせた体の下に左腕を押し込み、浮かせた頭を再び枕へ落とした。
「熱でも出たかな…」
枕に向かって呟いてみるが、答える声はない。
(俺の家なんだから当然だけど。)
体の下に押し込んだ左肩が軋む。痛む関節を震わせながら咳き込んだ佐助は一息に体を起こしてベッドを降りると、よろめく脚に任せて床に座り込んだ。
充電器のコードでぐるぐる巻きになった携帯を取り上げ、受信しているメールを開かずにリダイヤルを捜す。客の名前が並ぶそこから代表の文字を探す。画面の右端に表示された時間は小十郎の起床時間近くをさしている。通話ボタンを押して立てた膝に額を埋める。明るい色の髪が垂れるこめかみが心拍に合わせてズキズキと痛む。小さな頭蓋骨を震わせる呼び出し音を聞きながら右手でティッシュを摘み上げて鼻をかむ。
『…なんだ?』
「寝起きの声、やらしくてたまんない。」
鼻をかんでいる途中で呼び出し音が途切れ、低く掠れた声が応じた。一瞬黙った電話の向こうに、待って切らないで!と喚いて具合悪いから休みますと告げる。
『テメェも風邪か。』
「も?俺様以外に風邪ひいてる奴なんていたっけ?」
『流行ってるから気をつけろとミーティングで言ったはずだが。』
「代表のエロい唇見てたから聞いてなかった。」
『早く治せ。出れるようになったら連絡しろ。それ以外に余計な連絡はしてくるな。いいな?』
鼻をかんだティッシュを丸めてゴミ箱に向けて投げる。努力はするけど多分無理、と返して小十郎の返事は待たずに電話を切った。膝を抱えたままカチカチと携帯を操作して届いているメールを確認する。結露で曇った窓を見上げて今日の予定を思い出そうとするが、熱に浮かれた頭では思い出すことができなかった。携帯を放り投げ、耳の奥にこびりつく小十郎の声を反芻して、よろよろと立ち上がる。パジャマ代わりのスウェットの下を脱ぎ捨て、床に投げ出されたままのジーンズに脚を通す。冷えた感触に身震いすると、放り投げた携帯を持ち上げ、登録されているタクシー会社の番号に発信する。
タクシーを頼みながら、ワードローブの中からグレーのワイシャツを出して羽織り、机の上の財布と煙草を掴んで尻のポケットにねじ込んだ。キッチンの冷蔵庫から水のペットボトルを取り上げて家を出た。アパートの下でしゃがみこんで一息に水を煽る。佐助の目の前にタクシーが止まってドアを開ける。運転手は顔見知りのオヤジだった。
「今日はどこまで?お店かな?」
「いつものマンションだよ。」
「はいよ。」
運転手は滑らかに車を出し、住宅街の中を大通りに向かって走り出す。断りもせずに煙草を出した佐助をバックミラーで見ていた運転手は黙って窓を開けた。開いた窓の下には禁煙のステッカーが貼ってある。
咥えた煙草に火をつけた佐助は一口煙を吸い込んで、盛大に噎せた。咳き込む佐助をバックミラーで見た運転手が、風邪かい?と問う。佐助はまあね、と答えた。
「風邪なのにお仕事とは大変だねえ。」
「休むよ。やってらんない。」
「ありゃ、お客さんと会うのかと思ってたよ。」
「なーんで俺様がせっかくの休みに客なんかと会わなきゃいけないのさ?」
「あのマンション、お客さんの家じゃないのかい?」
しょっちゅうだから、そうなのかと思ってたよ。
佐助は煙草を挟んだ左手をひらひらと振って否定する。
「あそこは俺のダーリンのマンション。まあ、まだダーリンじゃないけど。」
「お客さん、ソッチの人?ホストなんてやってるから、女の子が大好きなのかと思ってたよ。」
「女も嫌いじゃないけど、代表にはかなわないのよ。」
俺様もうメロメロ。
呟いて窓の隙間から煙草を投げ、背もたれに頭を預けて目を閉じる。静かになった佐助に、運転手はもう声をかけなかった。窓の外を流れる景色が徐々に華やかさを増していく中、目を閉じた佐助は耳に残る小十郎の声を脳内で再生しながら、奥歯を噛んだ。鼻をすする。
声を聞けば会いたくなる。顔をみればキスがしたいし、目の前にいれば抱きつきたい。それだけ彼が好きなのだ。髪の一本まで自分のものにして離したくないが、彼はそんなつもりなど毛頭ない。それでもいいやとはまだ思えない。
しかし、彼は受け入れることはしないが、拒むこともない。触らせてもくれるし、一緒に寝てもくれる。今はそれで我慢しよう。できる自信はないけれど。
吐き出したため息は熱っぽく渇いている。
「着いたよ。」
運転手の声に目を開けて、財布の中から千円札を二枚出して渡す。釣りはいいよ、と言ってしずかに聳えるマンションのエントランスに降りた。暗証番号で中に入り込む。
エレベーターに乗り込んで壁に重たい頭を預けながら防犯カメラを睨みつけた。鏡面になったエレベーターの壁に映る佐助の顔色が悪い。俺、今日ブサイクだね、と呟いてエレベーターを降りた。
脚を引きずるようにして小十郎の部屋の前に立つ。コートのポケットに入っている鍵を握りしめ、左手でインターフォンを押す。鍵が開く気配はない。
『一回で出なかったら勝手に入ってこい』
彼の言葉を思い出したが、佐助はポケットの中で鍵を握り締めるだけだ。この扉の向こうに、彼以外の誰かがいたら、もしくは誰もいなかったら。迷惑がられることもあるかもしれない。なにしろ今の佐助は風邪菌を保持している。
廊下に吹く風邪がいつもより冷たいと感じるのは熱のせいか、開けられない鍵のせいか。佐助はドアの横の壁に背を預けてズルズルとすわりこんだ。前を開けたままのコートで細い膝を包む。少しだけ寒さを凌げる。
鍵を開ける勇気も、もう一度インターフォンを鳴らす勇気もない。
どれくらいそうしていたのかはわからないが、熱に火照る体が小さく震え始め、ポケットに突っ込んだ指先が冷たくなった頃、鍵が開いた。そのままドアが開き、前髪をおろしたままの小十郎が顔を出した。
「いつまでそうしてる。」
「……寒い。」
「俺もだ。早く入れ。」
頭上から降る声に、億劫そうに視線をあげた佐助は、ささえを失って閉まり始める扉に膝を挟んでそれを阻止すると、のろのろと立ち上がる。どうにか中に入れた安心感に、膝の力が抜けた。倒れこむように玄関に入り、座り込んで靴を脱ぐと、四つん這いで居間に向かう。
「何しにきた?」
「代表とやらしいことして汗かきに。」
いいながら床に伸びた佐助を見つめる小十郎の目はどこまでも冷ややかだ。そんな熱い眼差しで見ないで、熱上がっちゃう。床に伏せたまま鼻声で言う佐助から視線を外した小十郎は無言で立ち上がって寝室へ消えた。すぐに戻ってきた小十郎は床に蹲る佐助の小さな後頭部に体温計を投げて、次はキッチンへ向かう。
のろのろと体温計を脇に挟んだ佐助は床の上にあぐらをかいて座り込む。その丸くなった背中を、対面式のキッチンから眺めながらため息をつく。
佐助が来ることは予想の範囲内だった。インターフォンがなった時に、やっぱりな、と口角を上げたのは小十郎しか知らないことだ。
鳴らされたインターフォンに応えず、鍵を開けて勝手に入ってくる佐助に向ける不機嫌な顔を用意していたが、待てど暮らせど鍵は開かない。バカが、と呟いてから鍵を開けた。廊下に座り込んだ佐助の顔は青白く、前髪のわけ目から見える額には青い血管が透けていた。
そんなに具合が悪いなら、おとなしく家で寝ていればいい、と胸中に吐き捨てた言葉は、鍵を開けなかった佐助への暴言だ。
それでも使われない鍵を取り上げる気にはならない。
ピピ、と鳴った体温計の音に、止めていた手を動かしてコーヒーとミネラルウォーターを掴んで居間へ戻る。
「何度ある?」
「38℃ちょっと。」
ぼんやりとしている佐助の手から体温計を取り上げて38.8℃は8℃ちょっとじゃねえよ、と小さな頭を叩いた。
代表のサド!もしかしてそう言うプレイがイイの?俺縛られてもいいよ抱いて、と脚にしがみつく佐助を引き剥がしてソファに座る。小十郎の足元まで這ってきた佐助は、小十郎の膝に乗り上げ、ソファの空いたところに小十郎の体を押し倒す。佐助をどけようとする小十郎の手首を掴み、ソファに押し付けながら首筋に鼻先を埋める。
「代表シャワー浴びた?いい匂い。」
「どけ。俺はもう出る。」
「どかないよ。代表が抱いてくれないなら、俺が抱く。もう代表ってばやらしくてたまんない。」
「どうしてそうなる…」
大きなため息を吐いた小十郎は、首を甘噛みして顔を近づける佐助に、風邪は移すなよと言う。熱い吐息が耳朶を擽り、小十郎の背中が震える。諦めた小十郎は体の力を抜いて佐助のやりたいようにさせる。トレーナーの裾から入り込んだ熱い指先が腹筋をまさぐっていたのが止まり、浅い寝息が聞こえ始める。熱く華奢な体を抱き、あぶなかった、と呟く。首に蹲る派手な髪の毛に指先を押し込み、形のいい後頭部をぐしゃぐしゃと撫でて手を離し、暑いな、と汗ばんだ胸から佐助を下ろす。ソファに転がした佐助をしばらく見下ろし、テーブルの上の煙草の箱から一本を抜き出して火をつけた。燻る煙の向こうに苦しそうな佐助の寝顔を眺める。
「俺が女じゃなくてよかったな。」
今頃叩き起こされてる、と小さく笑った。ゆっくりと煙草を灰にし、軽い佐助を抱き上げて寝室のベッドに転がす。
ベッドの冷たさに体を押し倒す丸めた佐助に毛布を掛け、身繕いをしてから部屋を出た。
End
たまらないのは俺の方だ。
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