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::06.14   comment (0)


人間なんて言うのはゆっくり死んでるものなんだ。
人間だけじゃない、この世の中の全てのものは死に向かってしか進めない。
その死ぬまでの時間の中で暇つぶしに働いてそれで得た金でメシ食ってくだらないことをさも高尚みたいに考えてそうしていきてるって勘違いしてるだけだと思うんだよね。
タバコ吸わなかったって死ぬし、死にたくなくても死ぬわけ。遅かれ早かれね。
それは生まれた時からみんな決まってんの。残念だけど。
そうは思うけどね、どうしてアイツが死んでしまって俺が死ななかったのかがわからないわけ。
あいつはただうっかりクスリを飲みすぎちゃっただけだと思うんだけど。そりゃあほら、あんなやつだから自分から先の見えないあの世に行きたがるとは俺は思えないわけよ。
逆に俺は死んでもいいやと思って飛び降りたんだ。だってどうせ死ぬんだから。いまあの場所から下を覗くとよくこんな高さから飛び降りたなぁって思うけどね確かに。
でも俺は骨を折って肺が少し破れてしまっただけで一週間もしないで日常に戻ってきた。
アイツとは違う人間を確かに愛していたし、確かに手首を自分でザクザク切る癖は相変わらず治らなかったけど、死にたいとは思わなかった。
ただちょっと人生を早送りしたかっただけなんだ。
それでさ、俺わかったことがあるんだけどさ、多分俺は誰も大事にできない人間なんだなたぶん。
うん、あのあと救急病棟のベッドの上で折れた鎖骨のせいで寝返りもできないままずーっと天井眺めながら考えたんだ。
死にたくなくて死んだやつはきっと運が悪かった。死んでもいいと思ってたのに無様に生き延びた俺はきっと自分も自分を取り巻く誰も彼も大事じゃなかったんだ。
でね、物は相談なんだけど、お前、そんな俺が本当に好きなの?まためんどくさくなって死ぬかもしれないよ?次はたぶん俺、失敗しないで死ぬと思うけど、それでもいい?
あ、俺を止められるとかたぶんない。あの時俺は確かに他人を愛してた。お前の知らないヤツたけど。
仮に俺がお前を愛したとしてもたぶんまた俺は繰り返す。それが俺って人間だから。
それでもお前が一緒にいさせてくれって言うなら俺は断らないよ。断る理由はないから。

抑揚のない声で話し終えて黙った男がぞんざいな視線で対峙する男を見た。
向かい側に座る男は、吸っていたタバコをくるりと灰皿に押し付けて、ゆっくりと煙を吐いた。
おもむろに立ち上がった男は哀れな男の右頬をグーで力一杯殴った。乾いた音と鈍い音が混ざってまるで出来損ないのカルテットの様だった。
それでも男はその衝動に身を任せるだけで傾いだ身体を起こそうともしなければ痛みに呻くこともしない。きっとこれがこの男の全てなのだろう。
胸ぐらを掴み、引きずり立たせると低い声で上等だと凄んだ。

俺がアンタを繋ぎ止めるなんて御大層なこと嘯く口は持ち合わせてねー。だからせいぜいあんたが死ぬとこ見届けてやるよ。これで文句ねぇだろ。

合わせた唇の奥でがちりと前歯がかち合う音がした。

また不協和音か。







誰と誰だかわからないし誰と誰でもいいんですけど、昔はこんな話ばっかり書いていましたと言うことです。
これぐらい病んだ話たまには書きたいなぁ。


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